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ゴジラからバック・トゥ・ザ・フューチャーまで

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ワーナー・ブラザース&レジェンダリー・ピクチャーズによる「モンスターバース」(モンスター・ヴァース)は、これまでギャレス・エドワーズ、ジョーダン=ヴォート・ロバーツ、マイケル・ドハティという個性の強い監督たちが、それぞれの映画愛を隠すことなく前面に押し出してきたシリーズだ。集大成となる『ゴジラvsコング』も例外ではなく、監督のアダム・ウィンガードは、怪獣映画だけでなく様々な作品へのオマージュを捧げている。



『ゴジラvsデストロイア』/『キングコング』

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『ゴジラvsコング』で怪獣同士の対決を描く上で、監督にとって重要な体験となったのが『ゴジラvsデストロイア』(1995)だった。もともとはオープニングやビジュアル表現を気に入ったというウィンガード監督だが、クライマックスでゴジラジュニアが命を落とした後、ラストシーンまでの演出に感動し、涙を流したという。「ノスタルジックな音楽とゴジラのビジュアルの相乗効果があって、監督は本当にうまくやっていると思いました。こみ上げてくるものがあった」。その後、1976年版『キングコング』にも感動したという。

これらの体験を踏まえて、ウィンガード監督は「エモーショナルなものとして怪獣を体験してほしいと思った」と話している。「今回は何よりも、怪獣やキャラクターをそのように扱うことが大切だと思いました。とことん楽しい映画ですし、『ゴジラvsデストロイア』ほど悲しくはないけれど、エモーショナルな感覚を取り入れたかったんです」。




『キングコング対ゴジラ』

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米Colliderにて、ウィンガード監督は「木のシーンの引用は、個人的にすごく大事なことだった。昭和時代(のゴジラ映画)を代表するシーンのひとつだと思うから」とコメント。本作で絶対にやりたかったことのひとつだったと明かしており、撮影段階では別のバージョンが存在したことも認めている。「いろいろ試していて、もっと過激なバージョンもあったんですよ」と言っているあたり、編集段階で選ばれたのが完成版のシーンだったということだろう。

また、ウィンガード監督がもうひとつ認めているのは、コングを人間たちがヘリコプターで輸送するシーンだ。『キングコング対ゴジラ』では気球で運ばれていたが、これは監督いわく「直接的なオマージュであって、イースターエッグ(小ネタ)とは呼べない」とのこと。どのように再現されたのかは本編でじっくりと確かめてほしい。




シン・ゴジラ

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数あるゴジラ映画の中、ウィンガード監督が特に気に入っている作品として挙げているのが、庵野秀明総監督による『シン・ゴジラ』(2016)だ。「『シン・ゴジラ』は大好き。最も素晴らしいゴジラ映画の一本」と高く評価している監督は、『ゴジラvsコング』への影響も認めている。「ピンクがかった紫色の光線は、ゴジラの放射熱線の描き方に大きなインスピレーションを与えてくれました」。

一方で監督は、複数のゴジラ映画から影響を受けていることを認めつつ、過去作品への直接的なオマージュは少なめであることを告白。『GODZILLA ゴジラ』(2014)『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)といった従来のモンスターバース作品がオマージュを豊富に、かつ巧みに取り入れていることを踏まえて、「今回はできるだけ新しいことをしよう、なるべく見たことのないものを」という気概で取り組んだそう。




『ダイ・ハード』/『リーサル・ウェポン』

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VFXスーパーバイザーのブライアン・ヒロタは、「ゴジラが熱戦を吐いて、コングが母艦から飛び降りるところは『ダイ・ハード』のブルース・ウィリス。コングが脱臼した肩を直す動きは『リーサル・ウェポン2/炎の約束』(1989)のメル・ギブソン」と明かした。脚本家のマックス・ボレンスタインに至っては、『リーサル・ウェポン2』へのオマージュは「(完成版に)どれだけ入ったのかわからない。脚本に書いてあったものはほとんどカットされました」と言っているのだ。

ボレンスタインが言及した“バーのシーン”は、おそらく編集段階でまるごと削除されてしまったものとみられる。そのほか、ネイサン・リンドは『リーサル・ウェポン2』のマグカップを使い、『リーサル・ウェポン2』のTシャツ(しかも日本版)をよく着ているという設定。監督も「映画に残っているか、法的な理由でカットしたのかも覚えていない」というレベルのイースターエッグだ。





『2001年宇宙の旅』

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脚本家のボレンスタインによると、ウィンガード監督には、ホローアースに繋がるトンネルのビジュアルに当初から明確なイメージがあったという。「ほとんど『2001年宇宙の旅』のようなライト・ショー。レーザーの光の美しさ、カラーのトーンと雰囲気を求めていた」そうだ。




「バック・トゥ・ザ・フューチャー:ザ・ライド」

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ハリウッドに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズへの敬意を払うフィルムメーカーは少なくないが、同作を基にしたユニバーサル・パークス&リゾーツのアトラクション「バック・トゥ・ザ・フューチャー:ザ・ライド」の表現を映画に落とし込もうという監督は珍しいだろう。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにも2001~2016年まで存在した、かつての人気アトラクションだ。

米Polygonにて、ウィンガード監督は「『バック・トゥ・ザ・フューチャー:ザ・ライド』は大きな参照ポイント」と認めている。子どもの頃、自身がこのアトラクションに熱狂した体験を覚えていたという監督は、映画のクライマックスにこれでもかとばかりに活かしているのだ。

「VFXスーパーバイザーは乗ったことがなかったけれど、幸いにもライドの映像が残っていたんです。(映像の)特殊効果は今でも通用するものではなくて、(実際に乗った時には)素晴らしかったという記憶があったけれど、今になって見ると、“昔ながらのエフェクトだな”という感じ。だけど映像を見せて、“こんな感じにしたいんだ”と言いました。」




『ジェイソンX 13日の金曜日』

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前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を手がけたマイケル・ドハティ監督は、劇中でジョン・カーペンター監督『遊星からの物体X』(1982)にオマージュを捧げた。一方、ウィンガード監督が敬意を払ったのは殺人鬼ジェイソン……なのだが、それも2001年製作『ジェイソンX 13日の金曜日』だからひねりが効いている。

本国版の予告編にも登場する、コングが新怪獣・ノズキをつかんでぶん回し、同じくノズキにぶつけるという戦い方は、この映画におけるジェイソンの殺人方法を再現したもの。ジェイソンは寝袋で眠っている人間を持ち上げると、寝袋に入ったまま振り回し、別の寝袋にぶつけて二人とも殺害するのだ。これはRedditの質問企画にて、ウィンガード監督自ら「誰にも気づかれていない引用」として白状したものである。
THE RIVER
https://theriver.jp/gvk-homage/